| ラテックス・アレルギー Latex Allergy | |||
| どんな病気? | |||
| 天然ゴム(natural rubber latex)製品に接触することによって起こるじんま疹、 アナフィラキシーショック 、喘息発作などの即時型アレルギー反応をラテックス・アレルギーといいます。初めて医学雑誌に報告されたのは1979年のNutterによる接触蕁麻疹の患者さんの報告です。 | |||
| 天然ゴム製品は、手袋、カテーテル・絆創膏などの医療用具、炊事用手袋、ゴム風船、コンドームなどの日用品として日頃から接触する機会が非常に多い製品です。 | |||
| 最近は院内感染の予防のため医療従事者のゴム手袋の使用頻度が高くなったため欧米では罹患率が急速に上昇しました。また、バナナ・アボガドなどの特定の食物に含まれる蛋白質と交又抗原性を示すことまありラテックスアレルゲンに感作されると、これらバナナ、アボガド等の食べると蕁麻疹やアナフィラキシーショックを起こすことがありこれをラテックス・フルーツ症候群とよんでいます。 | |||
| この病気とは違います | |||
| 天然ゴム製品との接触で起こるアレルギーに接触性皮膚炎という病気がありますが、これは天然ゴム製品の製造過程で添加される化学薬品が原因でこの化学薬品により感作されることでおこる湿疹です。この病気は遅発型アレルギー反応によっておこりますので特異IgE抗体の産生はありません。 | |||
| どんな人がなりやすいの? (ハイリスクグループ) | |||
| 米国FDA(Food and Drug Administration)が1992年にラテックス・アレルギーの注意を報告するまでに、アナフィラキシーショックによる死亡が15名、アナフィラキシーショックが1000名以上報告されています。 | |||
| ハイリスクグループと言われているのは、 | |||
| @医療従事者 | 特に手指にアトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎がある場合 | ||
| A繰り返し医療処置を受けている患者さん | 欧米では二分脊椎症患者さんがこれにあたります | ||
| B食物アレルギー患者さん | 特にラテックス・アレルゲンと交又抗原性を持つアボガド、バナナ、クリ、キウイフルーツ等にアレルギーがある場合 | ||
| C天然ゴム製造業従事者 | |||
| 欧米でのラテックス・アレルギーの頻度は次のとおりです | |||
| 一般 0.8% | |||
| 手術室医師 7.5% | |||
| 手術室看護婦 5.6% | |||
| 歯科医師 13.7% | |||
| その他医療従事者 1.3% | |||
| 二分脊椎症患者さん 36% | |||
| 日本国内の報告は、欧米に比較して低く、医療従事者で1.1から3.8%がラテックスアレルゲンに感作されていると報告されています。日本国内の患者調査では、これまで16例のアナフィラキシーショック症例が報告されています。欧米の二分脊椎症患者さんのラテックス・アレルゲンIgE抗体陽性率は、34〜89%でありアナフィラキシー・ショック発症率は、7.2〜15.6%と報告されています。 | |||
| 天然ゴムの何が原因でしょう? | |||
| 天然ゴムの原料となるゴムの木は、そのほとんどがHevea brasiliensisという種類であり、東南アジア地域に集中して栽培されています。ラテックス(latex)は、成長したゴムの木の幹に傷をつけそこから得られた白い樹液であり、多くの蛋白質が含まれています。ゴムの性質は、1,4 cis-isopreneの重合によって得られるが、ゴム手袋など最終製品にもこの蛋白質が残留し皮膚と接触することで主に経皮的に感作されラテックス特異IgE抗体産生がおこります。これまで、主要アレルゲンとしてHev b1からHev b10まで約10種類が同定されています。 | |||
| ラテックスアレルギーはどのようにしておこるのでしょう | |||
| 天然ゴム製手袋やカテーテルなどの最終製品に残留したラテックス蛋白質(アレルゲン)は、皮膚と接触し汗によって水溶性蛋白質が溶出します。このとき手袋にまぶしてあるパウダーによって皮膚表層に傷がつきアレルゲンが侵入しやすくなります。粘膜からは溶出したアレルゲンが吸収されます。またパウダーに付着したアレルゲンは、手袋使用領域で空気中に飛散し吸入アレルゲンとして作用することがあります。 | |||
| ラテックスアレルギーではこんな症状がおこります | |||
| ラテックス・アレルギーで最も多い症状は、接触蕁(じん)麻疹です。手袋を装着した部分に、掻痒、発赤、膨疹、水疱形成がおこり、全身性に広がることもあります。アナフィラキシー・ショックに移行する場合もあります。アナフィラキシーショックは、手袋、歯科用デンタル・ダム、バリウム浣腸用のカフ、コンドーム、交又抗原性を有するフルーツ類の摂取によるものが報告されています。アナフィラキシーショックによる死亡例の多くは、バリウム浣腸用のカフによるものでした。呼吸器系症状は、接触蕁麻疹が全身に波及した場合や、手袋パウダーに付着したラテックスアレルゲンを吸入した場合に起こります。 | |||
| 医療従事者がラテックスアレルギーを発症し、喘息発作、アナフィラキシーを起こすため職場を変更せざるを得なくなった患者さんが欧米では多数報告され訴訟もおこっています。国内でも同様の症例が発生しています。 | |||
| 検査と診断 | |||
| @ | 病歴聴取 | ||
| 詳しい病歴聴取、血清学的診断、皮膚テスト、負荷テストの順に進めていきます。問診上は、医療従事者、二分脊椎症患者、頻回手術患者、食物アレルギー患者のハイリスクグループであるかどうかをチェックすることです。 | |||
| A | 血液検査 | ||
| ラテックス特異IgE抗体の測定は、現在健康保険適応があり商業ベースで利用できるのがPharmacia CAPとAla STATという測定キットです。血清中の特異IgE抗体の測定は、ラテックスアレルゲンに限らず多くの抗原で希に偽陰性に出ることがありますので注意が必要です。原因は、測定系で用いられる担体への抗原の固相化の問題と使用しているラテックスアレルゲンが実際に製品に含まれるラテックスアレルゲンと異なっている事があるためです。ラテックスを製品にする過程で薬品処理、加熱処理を行うため蛋白質の構造の変化が起こるものと考えられています。 | |||
| B | 皮膚テスト | ||
| 皮膚テストは現在、日本で利用できる市販の抗原エキスはありませんが、簡便な方法としてベットサイドでゴムの手袋をきざんで試験管に入れこれに生理食塩水を入れて1時間振盪させた液を用いてプリックテストをすることも可能です。米国では、FDA認可の抗原エキス(ALK-Abello, Stallergenes, Lofarma)が発売されています。プリックテストでも、非常に過敏な患者yさんでは全身性の蕁麻疹やアナフィラキシーショックをおこすことがありますので、病歴より強い症状が疑われる場合やラテックス特異IgE抗体が高値の場合は特に注意し、十分に希釈したものから開始するようにします。また、アナフィラキシーショックに注意し、救急医薬品や呼吸管理ができる状況で行ううようにします。 | |||
| C | 負荷テスト(Use Test) | ||
| 負荷テストでは実際にゴム手袋をはめてみるuse testが行われますが、強い反応が予想される場合は十分な注意が必要です。事前に血清ラテックス特異IgE抗体の測定や皮膚テストを行い危険な場合は行いません。 | |||
| 治療方法と予後 | |||
| ラテックスアレルギーの治療は、現在のところまず回避しかありません。診断がつけば症状が進行しないように日常生活、医療用具に注意し回避する方法を考えます。完全に除去されれば過敏性の改善が得られる可能性があります。 | |||
| 予防は、ハイリスクグループでは、ラテックス製品を回避するようにしてください。 | |||
| 国内での対応として、厚生省は1992年に医薬品等安全性情報で、米国FDAの発表を日本語化して発表しました。その後、1996年には日本ラテックス・アレルギー研究会が発足し、研究会を毎年開催し、民間、行政、メーカーが討議・協力し、ラテックス・アレルギーの予防・啓発活動を行っています。 | |||
| 1999年には、国内でも医療用具の添付文書にラテックス・アレルギーに注意するよう表示する法律が制定されました。 | |||